FrontPage/2015-08-28
北鎌尾根
多くの岳人の憧れである北鎌尾根は日本を代表するクラシックルートである。
険しい岩稜。長いアプローチ。
そして何より槍ヶ岳のピークがフィナーレを飾る。
北鎌尾根に取り付く前夜は北鎌沢出合でキャンプするのがいい。
山懐に抱かれて焚火を見つめながら、明日への不安と闘い、期待へ胸膨らますひととき。
長く急な北鎌沢を詰め上げて北鎌のコルから天狗の腰掛へ登り詰めると正面に独標が大きく立ちはだかっていた。
槍の姿は独標に遮られ窺い知ることはまだできない。
赤くザレた硫黄尾根を背後に高度を稼ぐ。
気の抜けない岩場が次々と現れる。
荒々しい稜線がどこまでも続いている。
確かなルートファインディングが要求される。
突如、霧に隠されていた槍ヶ岳の峰頭が姿を現した。
圧倒的な存在感で君臨するスパイヤー。
そこに住む雷鳥もどこか険しい顔をしているようだった。
北鎌平の手前にあるレリーフが疲れた体を奮い立たせてくれる。
ここを過ぎればあとは槍の穂先の登りを残すだけだ。
最後の岩場を登り切れば山頂はすぐそこだ。
山頂の祠の裏からひょっこりと顔を出す。
居合わせた登山者の賞賛や羨望が気恥ずかしくも悪くない気分。
達成感と安心感、感動がないまぜとなって熱いものがこみ上げる。
北アルプスだけでなく日本を代表する素晴らしい尾根であることを今回改めて実感することができた。
北鎌尾根から望む槍ヶ岳のピークは他のどこから望むものより堂々として大きく威厳に満ち溢れていた。
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