FrontPage/2010-10-08
秋の賑わい
木々の色づきとともに北アルプスは賑わいをみせている。
上高地のバスターミナルには大型バスが並び、河童橋の周りではテレビの取材も行われていた。
遅れていた紅葉も、近頃の冷え込みで急ぎ足でやってきたようだ。
梓川沿いにあるケショウヤナギやカラマツは真夏のまぶしい緑から黄緑、
そして黄色へと変化している。
稜線を見上げれば、鮮やかな赤がところどころに散らばって見える。
上高地から明神、徳沢へのいわば表街道ともいえる道は
観光客やハイカーが列をなしている。
一方、山を一つ挟んだ古くさびれた道は訪れる人も少なく、
その紅葉も多くの人の目に触れることはない。
しかしここでも着実に、そして静かに秋がやってきていた。
峠を越えて湧水の豊富な沢沿いの道を歩く。
栃の木の大木が沢に沿って点々とたたずんでいて、
その足元には必ずといっていいほど沢山の実が落ちている。
どうやら今年は豊作のようだ。
よく見るとほとんどは殻だけで中身がない。
栃の実は毒があって熊も食べないというが
-確かに人が食べる時もあく抜きなど非常に手間がかかる―
誰が持ち去ったのだろう?
古い木の橋の土台の石組みからオコジョが顔を覗かせていた。
静かに見ていると2、3匹のファミリーのようだ。
人通りの少なさゆえ登山道そのものともいえる石組みも居心地の良い住処となっているのか。
警戒心の強いオコジョもここではのんびり構えている。
しばらくは綺麗な滝を見たり橋を渡ったりしながら歩き易い道を行く。
少し前には和歌山から来たという二人連れの夫婦がつかず離れず歩いている。
小さな枝沢を横切ったところでふと河原を見ると真っ黒な塊が動いていた。
思わず、「くまっ!くまっ!」と声を出した。
僕らとの距離は40~50mくらい。沢の水を飲んでいたらしい。
先行の二人は気づかずに行ってしまったようだ。
様子を見ていると斜面を登ってきて登山道を横切り、山へ登って行った。
それほど大きくなかったので今年生まれた小熊かもしれない。
幸い近くに母熊はいなかったらしく大事には至らなかった。
動物たちも急速な秋の訪れにあわてて冬支度をしている最中なのかもしれない。
山はまた静けさを取り戻した。
賑やかな秋、静かな秋、静かなようで賑やかな秋。
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