FrontPage/2011-01-15
Tag: 厳冬期飯豊連峰 くさいぐら尾根 温身平 長者原 梅花皮山荘
SNOW PARADISE EPISODE.8 (厳冬期飯豊連峰縦走記)
静かな朝だった…。
いつものように天幕が雪に埋まってしまったのだろうか?
外へ顔を出してみると積雪は数cm程度である。
空は明るく穏やかである。
無風快晴であった。
朝焼けが稜線を薄紅色に染めている。
山々は美しく輝いていた。
昨日あれほど我々を苦しめた「くさいぐら尾根」もはっきりと姿を現している。
皮肉なことに我々が撤退した翌日は絶好の縦走日和となったのだ。
朝日が「ダイクラ尾根」から顔を出す。
久しぶりの太陽の光であった。
辺りは眩しいほどの光に包まれ、雪に覆われた山々が遥か遠くまで望まれる。
高度を落とした尾根は、雪は深くいまだ大きな雪庇を張出し油断はできないが、
大分歩き易くなり、気分も軽やかである。
左右に梅花皮川と玉川の流れが近づいてくると「温身平」はすぐであった。
ここまで林道があり、夏季はバスの便がある飯豊山荘まで30分の距離であるが、
今は雪に閉ざされ雪原が広がっている。
黙々と林道を歩く。
膝くらいまでのラッセルだが、時折、腰くらいまで潜る。
雪は重い。気温が上がるにつれ更に重くなる。
飯豊山荘を過ぎてもまだまだ林道のラッセルは続く。
起伏がなく単調な分だけ、精神的につらい道のりである。
わずか5.5キロほどの道のりであるが、6時間ほどを要した。
ふり返れば北股岳が大きく美しくたたずんでいた。
思えば冬山の厳しさと美しさをまざまざと思い知らされた山行であった。
重荷にあえぎ、1日歩き続けてもわずかな距離しか稼げない。
大量の雪につぶされそうになる。
吹雪に脅かされ、進路を見出すのも困難。
泳ぐように雪にもがき苦しんだ。
そこに華やかさは全くない。
しかし、そこには厳冬期の飯豊連峰を歩いた者にしか分からない魅力があった。
そこに刻んだ一筋のトレースがそれを証明してくれているようであった…。
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