FrontPage/2012-02-21
Tag: 厳冬期 西穂高岳 奥穂高岳 ジャンダルム 2012 2月
厳冬期・西穂高岳~奥穂高岳縦走 その1
喧噪の新穂高ロープウェイ乗り場を過ぎると、静寂に包まれた青い空と、白い雪の世界が広がっていた。
穂高平までの林道は深い雪に覆われ、かすかに古いトレースが確認できたが、新たにラッセルしていく必要があった。
西穂高岳までの登路は当然、西尾根である。
あっという間に高度を稼いでしまう文明の利器は登山本来の魅力を半減させてしまう。
新穂高の駐車場にいた小さなザックにスノーシューをくくりつけた登山者たちは、空飛ぶ箱の中に吸い込まれていった。
ここは我々だけの道を刻むことのできる、純白のキャンパスである。
新雪が30㎝ほど積もっているが、下地の雪は締まっていてラッセルは年末の黒部に比べるべくもない。
なにせザックを背負ったままトップでラッセルできるのだから。
(黒部ではトップ二人が空身で道をつけた後でないとあるけなかった)
パートナーは病み上がりで足に力が入らず、ラッセルのほとんどが私の担当となった(なんと幸運であろうか)。
この日は標高2150m付近に幕営。
明日の為にもっと高度を稼いでおきたかったが、途中から雪の下に隠れている穴に落ちまくって嫌気がさしたのである。
今年の穂高周辺は根雪が少なく、溶けて穴が開いたその上を新雪が覆っているので、落とし穴だらけなのだ。
穴に落ちると這い上がるのに一苦労だし、無性に腹が立つ。
二日目。
森林限界を越えると西穂高岳の山頂が鋭く天を突き眼前に飛び込んでくる。
独標までの稜線は幾つものピークを連ね荒々しい。
一つのピークを越えるとまた、一つのピークが現れる。
山との我慢比べである。
天気は快晴で風も穏やかである。
強い日差しが肌を焼く。
時折ロープを出しながら雪壁を登ったり、トラバースしたりしながら、少しずつ進んでいく。
左手前方にはジャンダルムが飛騨尾根を谷底へ急激に落とし込んでいる。
目指す頂きは遥か遠い道のり。
小ピークを巻き終えるとそこにはトラックほどの大きさの雪庇が形成されていた。
単純に稜線をたどっていたらと思うと恐ろしい。
小さなミスが致命的な結果を招く。
細心で慎重な判断が要求される。
西穂山頂への最後の登り。
この高度での重荷を背負って登攀は息が切れる。
14:15山頂へ到着。
予想外に時間がかかってしまった。
進めるだけ進んで、間ノ岳手前のコルに幕営。
夜は激しい風が、テントを揺らした。
(その2へつづく)
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