FrontPage/2013-08-15
木曽御嶽山・濁河川兵衛谷
木曽御嶽山は富士山に次いで標高の高い火山である。
山深くにあり、かつ中央アルプスや南アルプスの背後に位置するため巨大な図体の割に都市部からはお目にかかれない。
信仰は厚く現在でも信者が白装束に法螺貝をもちブオーブオーと吹き鳴らしながら登ってくる。
「御嶽山は滝の山である」と言われるほど、御嶽山を源とする河川には滝が多い。
地形が急峻で高低差が大きいこと、独立峰で山体が大きいこと、降水量が多いこと、
豊かな森林を育んでいて水が涸れることがないことなどがその成因となっている。
この夏のメインイベントとして、その御嶽山の西側に深く喰いこむ濁河川の兵衛谷を遡行した。
山麓にある厳立公園から入渓。ここまで東京からでも5時間はかかる。
ここは標高約700m。山頂までの標高差は約2300m。流程は20キロ以上である。
入渓するとすぐにゴルジュ帯となる。
深さは膝上程度である。
ゴルジュの中の釜が現れるたびに泳ぎを強いられる。
3泊分の荷物の入ったザックは大きく、泳ぎの際は邪魔だ(むしろ死にそうになる)。
リードが空身で泳いで、フォローをザックもろとも引き上げる作戦とした。
水温が冷たいので、なるべく水に浸かっている時間を短くしないと即座に低体温症である。
気温が上がるまでは水から上がると荷物も身体もずっしりと重くなり堪える。
早速、雨具の上下も着用してなんとかしのぐ。
途中の大きな滝は高巻きせざるを得ないが、やや悪い部分もある。
しかし泥壁、草付きクライミングは私の得意とするところでもある。
ヤブ漕ぎも慣れたものだ。
今回トポも地形図も持たないで来たので、周りの地形をみながら判断していく。
ゴルジュ帯を抜けて、長い河原歩きをして、滝を幾つか高巻いて
ようやく曲滝上のポイントにたどり着き、幕営。
イワナは一匹のみ、塩焼きにして食す。
沢は焚き火に限る。
ブランデーをがぶ飲みして就寝。
二日目もゴルジュ帯が続く、易しい滝やナメも現れて愉しめる場所も多い。
長大な沢なので、登るにつれいろいろな表情を見せてくれる。
ゴルジュの側壁からは湧水が滝となって落ち込んでいる。
御嶽山はいたるところから湧水がわいているのだ。
後半戦は登れない滝が続き、苦しい高巻を強いられる。
途中、笹がかられている巻道があったが麓の小坂町が滝巡りツアー上級をやっているそうだ。
だがしかし、ボロボロのドロドロの急斜面につけられた道はかなり危険に感じた。
今晩は材木滝上まで行きたいと頑張っていたが、材木滝はなかなか遠かった。
これは龍門の滝というそうだが、御嶽山の神秘を感じる。
結構ボロイ壁なども登る。重荷が堪える。
出口のない釜も現れる。御嶽山の神秘をまた感じる。
デカい滝も多く巻も大変。
結構ヘロヘロになって材木滝の上に幕営。
他の記録では結構余裕で到着しているようだが、今回は水量が多く余計に時間がかかるようだ(言い訳)。
3日目は出だしから泳ぎの釜が連続する…が冷たさにひるんで高巻きまくる。
ナメの岩が多いが、苔がとにかく滑って仕方ない。
巨大なゴルジュを抜けると二俣の両方に滝のかかるポイントにでた。
まだ標高が低いようなので右俣を突き進んだが、これが間違いで2時間のロス。
巻きも悪く、危うい泥壁のトラバースを強いられたのに…。
左俣のシン谷へ入ると岩も滑らなくなって快適だった。
水が涸れそうになってきたので30m滝の前に幕営。
夕方、夕立が来たが焚き火は消えなかった。
源頭に近づいてもまだまだデカい滝が出てくる。
この辺はどれも登れないので、巻いていくがアザミやハリブキが鋭い攻撃を仕掛けてくる。
だんだん荒涼としてきて水も涸れるが、少し歩くとまた水流が復活する。
結局稜線の直前まで涸れることはなかった。
日本離れした景観の中登って行く。
次第に稜線のピークが見えるようになってきた。
2800mの日本最高所にある滝。
アイスクラインミングもできるらしい。前に登りに来たが、吹雪で敗退したことがある。
詰めはお花畑で締めくくり。
ヤブ漕ぎはなく、見晴らしがいい。
最後の賽の河原は地獄ではなく天国であった。
御嶽山はやっぱり大きかった。
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