FrontPage/2014-03-31
秘密の花園
倒木を跨ぎ、グズグズの崩壊地を横切って降り立った沢は一面の残雪に覆われていた。
先人のトレースを追って急な雪渓をたどると、見上げた先に何か柔らかな雰囲気の漂う一角があった。
そのあたりは雪に覆われた周囲から離れ小島のように、浮かびあがるような輝きを放っていた。
白いキャンパスにまぶしいほどに濃い黄色を塗ったように、そこだけ周囲にはない色彩が独自の主張をしていた。
それまでの道端やそれ以降の尾根筋にも花は全く見当たらなかった。
ただそこだけ守られた庭園のような福寿草の楽園であった。
足の踏み場がないほどに咲き誇る福寿草。
この花は花弁を使って日光を花の中心に集め、その熱で虫を誘引している。
そして私達もそんな虫たちと同じように引き寄せられたのかもしれない。
まだ雪が解けたばかりの茶色い落ち葉のあたりを良く見てみると、たくさんの蕾たちが花を咲かせる時を待ちわびていた。
彼らを踏みつけないように、雪の残る場所から写真を撮らせてもらった。
そして、その雪の下にも多くの眠れる朔日草が春の日差しを心待ちにしているのだろう。
大樹に寄り添うように群らがる春の妖精たちは地図を頼りに雪を踏んで足を運んだ来訪者に、
花言葉の通り 「祝福」 で迎えてくれた…。
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