FrontPage/2014-06-03
早池峰剣ヶ峰
遠野の空はどこまでも澄んでいて広かった。
民話や伝承が息づくこの地には何か神秘的で不思議な空気が流れている。
それは昔ながらの街並みからであろうか、どこまでも続く青い森からか、
あるいは伸びやかな放牧地に吹く爽やかな風のせいあろうか。
綺麗に整備された杉林の中に真っ直ぐに続く登山道。
清々しくも、どこか気が引き締まる思いがする。
登山口から目指す頂を望むとき、その頂が思いのほか遠く高いことに驚くことが多い。
でもひとたび歩き出せば、歩をすすめるごとにその頂は思いのほか近づいているものだ。
気づけば目的地まではあとひと頑張り。
ブナやダケカンバ、珍しいイチイの巨木、ヒバの純林の森を潜り抜けて
明るい花崗岩の岩塔から見下ろした森は波打つ大海のようにどこまでも広がっていた。
道は次第に落ち葉積もる土道から積み重なる大きな岩へと変わっていった。
照りつける日差しは強く、初夏とは思えないほど高い気温に汗がしたたり落ちるが、
雪渓を渡ってきた風が時折吹き抜けて、私達に元気を取り戻させてくれる。
人影まれなこの尾根にもひっそりと美しい花が咲いている。
そして、これから多くの花が次々と花開くのだろう。
大岩を越えたり、ときに飛び跳ねて歩く。
変化に富んだ道は山歩きにほどよい刺激を与えてくれる。
早池峰は花の山。
ナンブイヌナズナはこの山の固有種だ。
ミヤマキンバイは白い岩肌によく映えて美しい。
これから次々と多くの花が咲く早池峰。
そして多くの人々が訪れることだろう。
遠野の山には確かに神様が宿っていた。
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