FrontPage/2014-07-15
飯豊連峰縦走 2014
稜線に上がるといつもと変わらぬ姿で私達を出迎えてくれた。
ヒメサユリの花を見たいなら梅雨の明けきらぬこの時期に足を運ぶべきだろう。
たとえガスに覆われ小雨の泥道を歩く羽目になっても
時折現れるヒメサユリが辺りを明るくして、心を晴れやかにしてくれる。
飯豊の稜線に登り詰めるにはどの登路をとっても厳しいものだ。
いつもは下山に使う足の松尾根もまた急登が続くし、岩場も現れて気が抜けない。
大石山の山頂に立って一時は稜線の景色と花々に癒されるが、
そのあとに立ちはだかる鉾立峰はいつ登っても苦しいものだ。
夜中、激しい風雨が杁差小屋をたたく音に目を覚ました。
朝になって小屋を出ると雨は止んでいたが、濃いガスが強い風に流れていた。
昼には晴れてくるとの予報を信じて歩みを進めるが、いっこうに山々は姿を現さなかった。
それでも足元に咲く花は絶えず行く道を彩って、私たちを慰めてくれた。
ここの「ゴゼンタチバナ」は花びら(ガク)に紅を注しているものが多い。
本州では珍しい「ウズラバハクサンチドリ」はその葉に文字通りウズラの卵のような模様がある。
思い出深き北股岳でも展望を得られず梅花皮小屋へと下った。
管理人の関さんは依然と変わらず赤ら顔で出迎えてくれた。
日が沈むころ、ようやくガスが晴れて大きな大日岳が姿を現した。
陽が沈む直前に北股岳の背後の雲が紅く燃えて異彩を放つ。
浮かぶ雲は刻々と色を変えて次第に辺りは闇に包まれた。
珍しい「ハクセンナズナ」。
稜線一帯を覆う「ヒナウスユキソウ(ミヤマウスユキソウ)」。
朝から晴れるとの予報にも裏切られガスに包まれた雪渓をたどる。
今年は稜線の雪解けが遅く、例年にも増して残雪が豊富だ。
御西小屋に着くころ、ようやく青空が見え始め目指す大日岳が山容をあらわにした。
重い荷を小屋にあずけて軽快に歩を進める。
遠い頂、大日岳で深い感慨にひたる。
御西岳の道は青空に吸い込まれるように続いている。
ここは飯豊でも一番のプロムナード。
振り返れば北股岳は遠く、今日歩いた道のりだけでも驚くほど長いことを知らされる。
目指す本山はもう一息。最後の頑張りどころ。
信仰の頂、本山の標柱は落雷によるものか裂けていた。
周囲に遮るものはなく雪渓が様々な模様を描いている。
稜線は長く大きく続いていて、そこから伸びる尾根もまた一つの山脈を形成するかのごとく存在感を示していた。
長時間の行動でようやくたどり着いた本山小屋では思いがけない歓待を受けて、
飯豊の良さを改めて実感することができた。
美しい山。そこに集まる温かい人々によって飯豊は魅力を増しているんだろう。
飯豊に通い始めてから7年が経つが、足を運ぶ度に大きな感動と達成感を与えてくれる。
厳しい自然の中に、包み込むような優しさを持った飯豊連峰。私の大好きな山です。
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