FrontPage/2014-08-26
剱岳・北方稜線
まだ明けやらぬ池の平を出発し、ライトの明かりを頼りに鉱山道を進むと小窓雪渓へとぶつかる。
温かな空気と雪に冷やされた空気が混ざり合った生ぬるい風が雪渓を吹き降りてくる。
雪渓を詰めて小窓へたどり着く頃、視界を遮っていたガスが上がり始め背後のとがった池の平山が姿を現した。
道は次第に険しさを増して、お花畑の中に岩場が連続するようになる。
小窓の頭のトラバースでは急峻な雪渓が残っていて、横断する際に下を覗くと吸い込まれるような錯覚を覚えた。
圧倒的な迫力の小窓の王南壁。
基部を巻いて三の窓へとガレ場を下降する。
正面には北方稜線の難所である池の谷ガリーが長大な滝のように立ち塞がる。
三の窓より池の谷をのぞき込むと雲海の向こうに富山湾が浮かぶ不思議な光景が広がっていた。
慎重な足運びでグズグズの池の谷ガリーを詰める。
今年の夏は天候が悪い日が多く通過者が少ないようで、例年に比べ浮石が多いようだ。
長次郎の頭を巻くようになると、陰鬱な池の谷側と打って変わって明るく開放的なムードが広がる。
眼下には長次郎雪渓が白い帯のように続き、それに並行して続く八峰の岩峰群が荒々しい。
正面には大きな剱の本峰が見え隠れしている。
山頂には新しい大きな祠が設置されていた。
晴れやかな笑顔の登山者たちで溢れる山頂を後に早月尾根を下降する。
正面に雲海を望みながら気の抜けない下りが続く。
早月小屋にて祝杯をあげ、翌日はゆっくりと長い尾根を下った。
途中、多くの杉の巨木が迎えてくれる。
のどかな馬場島へとたどり着いて長い縦走に終止符を打った。
振り返るとガスな切れ間にたどってきた稜線が見え隠れしていた。
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