FrontPage/2014-09-13
鋸岳縦走
雄大でゆったりとした山容を連ねる南アルプスにおいて鋸岳は「異端児」といえる特異な山といえよう。
険しく鋭利な稜線。切れ落ちた側壁。絶え間なく続く崩壊。
例えるなら北アルプスの剱岳北方稜線に近いものがある。
剱ほどのスケールはないが、激しさにおいてはゆずるものではない。
甲斐駒ヶ岳より目を移すと岩峰連ねる稜線が続いている。
赤茶けた岩肌が周囲の山との違いを主張しているようだ。
季節は確実に移ろっていてウラシマツツジの葉はいち早く赤く色づいていた。
日差しは強いが吹き上げる風は肌に冷たい。
鋸岳方面へ足を向けると歩き易い甲斐駒山頂までの道とはうって変わって、不明瞭な道となり険しさを増す。
蒼い空に白く輝く花崗岩の岩肌がまぶしい。
六合石室は鋸岳縦走にとって重要な位置にある。
以前よりも快適度は増して利用しやすくなった。
マナーを守って大切に利用したいものだ。
中ノ川乗越までは概ね樹林帯を行く。
東の空から朝日が昇って樹間に紅い光が差し込む。
乗越からいよいよ鋸岳の本領が発揮される。
浮石に気を配りながらガレ場を登り詰めると第二高点。
目指す第一高点は指呼の間だが、思ったよりも時間はかかる。
タカネビランジが厳しい縦走路に一時の安らぎをあたえてくれる。
光のもれる「鹿の窓」目指して、脆い岩場を駆け上がる。
天然のトンネルを抜けると鋸岳核心部が始まる。
鎖に頼りながら激しいアップダウンをこなす。
落石に気を配りながらの登下降は技術必要だし、危険度も高い。
鋸岳第一高点では角兵衛沢からの登山者の姿があった。
下りの核心部となる角兵衛沢は他に類を見ないほどのぼろぼろのガレ場だ。
もはや登山道と呼べるものはそこにはない。
うんざりするほどの下りを経て戸大川の河原へと降り立つ。
ここからはつらく長い河原歩きを回避して歌宿へ向かう。
勘を頼りに苔むす尾根を登り詰めるとドンピシャで歌宿バス停へ飛び出した。
鋸岳展望台ともなっている歌宿から歩いてきた道を心行くまで眺める。
疲労感と達成感が入り混じった至福のひとときであった。
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