FrontPage/2015-01-10
厳冬期 利尻岳南稜 その5
2015年1月1日の朝は寒気と強風と共に幕開けた。
雪洞を出た瞬間、強風にあおられ一瞬にして全身の衣服が凍りついた。
本峰への登りは確実性も大事だが、何よりも素早く登ることが必要だった。
そうしなければビレイヤーはなすすべなく凍りついてしまうからだ。
たどり着いた本峰は白い光に包まれていた。
時折、ガスの切れ間から力強い太陽の光が差し込んでいた。
厳冬の利尻岳の山頂を足下にして声をあげ喜びをあらわにする。
長居したいところだが、吹き付ける風が感傷にひたる暇を与えず、私達を追いやった。
視界の得られない中、一年ぶりに北峰の祠(今は氷の塊であるが)で写真を撮る。
右目は凍りついて開くことができない。
厳しい寒気と強風。肩に食い込む重荷。胸まで没する深雪。視界を奪う地吹雪。
それでも私達の心は満たされ、至福の時であったことは言うまでもない。
北峰からの下降は当然ながら最大限の慎重を期して行動した。
北稜から西側をのぞき込むと身もすくむような絶壁が流れるガスの向こう側に鋭く、深々と落ち込んでいるのであった。
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