FrontPage/2015-10-24
浅草岳から鬼ヶ面山
浅草岳は二百名山に選ばれる所以もあってか大変多くの人に登られている。
そのほとんどが新潟県側からであり、アクセスの良さと山頂までの行程の手軽さによるものであろう。
それもそのはず福島県側の登山口のある只見へ首都圏から向かうには六十里越という険しい峠道を越えるか、
那須塩原から会津高原を延々と走らなければならない。
それでもなお浅草岳のお勧めの登路を問われれば福島県側の只見尾根以外の答えは浮かばないだろう。
田子倉湖畔の登山口より只見川に沿った登山道をたどり、架橋を渡ると森閑としたブナの森へと導かれる。
その一つ一つが森の主足り得る大きなもので手つかずの森であることが窺える。
周囲の紅葉も盛りで歓声をあげながら高度を稼ぐ。
尾根を登っていくと遠く浅草岳の山容が望まれた。
その距離からこれから登っていく只見尾根の長大さが知れる。
左手には浅草岳を越えて縦走する予定の鬼ヶ面山が険しい岩壁を従え屹立していた。
南面だというのに未だ雪渓を残し、雪の際はまだ青々として鮮やかである。
辺りの紅葉と相まって独特の景観を作り出していた。
堂々とした山容の浅草岳は南アルプスの巨峰群にも劣るまい。
登り詰めるにつれ、尾根は痩せ、時折岩場も現れるようになった。
痩せ尾根は大らかかな頂稜に吸い込まれ、やがて辺りが草原の様相となると頂上にたたずむ社はすぐそこであった。
澄み渡る秋の空が広がっていて山頂で憩う登山者には笑みが絶えない。
人々の暮らしや山を登る者たちの装備や服装はかわっても、ここは何十年も前から変わらぬ風景が残っている気がする。
山頂直下の大草原は浅草岳の白眉で春には豊富な雪田を残すが、今は草紅葉が美しい。
強く冷たい風が雪の便りの近いことを予感させた。
鬼ヶ面山へと続く縦走路は麓から見上げるよりもずっとアップダウンが多かった。
南面は鋭く切れ落ち、谷川岳の岩壁を思わせる。
山頂の賑わいもここにはなく、静かな稜線歩きを楽しむことができた。
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