FrontPage/2010-11-09
Tag: 大菩薩連嶺 小金沢連嶺 大菩薩峠 介山荘 柳沢峠 牛奥ノ雁ヶ腹摺山 狼平
峠をめぐる山旅
『 鉄道や車道の発達は、目的に応じて拓かれた昔の径を山中に置き去りにしてしまった。
それは文明というもののもたらす必然である。
ひとが通らなくなれば、径はすぐに薮に埋もれていく。目的を失った径を、ひとはふり返らないからである。
けれどそこには、ひとと自然が織りなしてきた生活の歴史が色濃く刻まれている。 』
(「古道巡礼」高桑信一著:東京新聞出版局より)
甲斐と武蔵の国境線には古来、人や物資の往来が盛んであったことを
証明するように多くの峠が山を越えている。
今回我々が歩いた、大菩薩連嶺から小金沢連嶺には実に多くの峠がある。
大型車が通行できる国道から人一人がようやく歩ける登山道。
あるいは笹薮に埋もれ、かつてそこに径があったことすら知れないものもある。
柳沢峠~六本木峠~ブドウ沢峠~天庭峠~寺尾峠~丸川峠~大菩薩峠~石丸峠~湯ノ沢峠
二日間で歩いただけでも実に九つの峠が稜線を越えている。
稜線の径は苔に覆われ、石はきれいに並べられ歩き易い。
暗い針葉樹の森の上から差し込む光は苔の鮮やかな緑色をいっそう惹きたてる。
暗い森を抜けると、そこは光に溢れた『峠』であった…。
風に揺れる薄とともに心も躍る。 そんな開放感がある。
峠に立つ山小屋はおそらく何十年も変わらぬ姿でそこにあるのだろう。
幾人の旅人がこの風景に感動したことか。
時には期待を膨らませ、時には疲れた体を引きずって…。
雪を頭に頂いた富士は変わらずに旅人を見守ってきた。
そして今日も夕日が山際に沈んでいく。
いつも人気のない狼平は、明るいけど寂しげなところ。
群れを離れた狼が彷徨い歩いている姿が浮かぶ。
陽だまりの落葉樹の森には落ち葉の絨毯が敷き詰められていた。
思わず寝転んで空を見上げた。
白谷ヶ丸では遮るもののない富士と正面からご対面。
さっきから見え隠れしていたけど、ようやく面と向かって挨拶をする。
落葉松は黄金色に輝き、秋の終わりを告げようとしていた。
コメント