FrontPage/2011-01-12
Tag: 厳冬期飯豊連峰縦走
SNOW PARADISE EPISODE.5 (厳冬期飯豊連峰縦走記)
快調に距離を稼いで北俣岳へと到着する。
大展望が開け、目指す飯豊本山や昨秋に縦走した朝日連峰、凍った木道にてこずった吾妻連峰など
思い出深い山々も望め感慨もひとしおである。
昨日までは北股岳までいつになったらたどり着けるのか見当もつかなかったのに、
こうして立っているのが不思議な感覚である。
もっとも風が強く余韻に浸っている余裕はない。
梅花皮小屋までは下る一方で山頂からものの15分ほどで到着した。
一階部分は半分ほど雪に埋まっている。
豪雪の山の避難小屋では二階にも入口が設けられていて、冬季はそこから出入りするのだ。
相棒が梯子を登って、二階の入り口を開けようとする…。
「開かない!?」
私が交代してみても全く開く気配はない。
どうやらしっかりと鍵がかかっているようだ。
ならばと一階の入り口を確認する。
よく見るとドアがわずかに開いている。
埋まっている部分の雪を排除し、思い切り押してみる…。
「開かない!?」
よく見るとわずかに開いている隙間から雪が大量に吹き込んでいる。
そしてその雪の塊ががっちりとドアを押さえつけている。
しかも融解と凍結を繰り返しているのか、ほとんど氷の塊である。
その後、我々は1時間半ほどない知恵を振り絞り、疲れ切った体の持てる力を尽くし、
ドアを開けるために苦闘したが、その甲斐はなく、我々の避難小屋パラダイス計画は脆くも崩れ去ったのである。
やむなく小屋の陰に天幕を張る。
今できる最善のことをやるしかない。
もっともできるのは悪態をつくことぐらいであるが。
いつものように天気予報を確認する。
明日は低気圧が通過し雪。明後日はいったん冬型がゆるむ。その後は年末から正月にかけて、猛烈な冬型となる。
今日のことでこの先の避難小屋が本当に使えるのか不安になってきた。
計画では稜線途中で撤退する場合に使用できるのは「丸森尾根」、「梶川尾根」、そして烏帽子岳から派生する「くさいぐら尾根」である。
そして烏帽子岳を越えたら完全縦走するしかない。
つまり烏帽子岳が行くか撤退するかの最終分岐点なのである。
われわれは判断に迷った。
今日くらいの稜線の状況なら、縦走は可能である。しかし、途中で強い冬型に捕まったら大停滞に追い込まれるだろう。
そうしたら正月明けの仕事に差し支えるかもしれない。
しかし縦走も完遂したい…。
登山体系の「停滞すればするほど危険度は増す…」という一節が脳裏に浮かぶ。
つづく・・・
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