FrontPage/2015-01-07
厳冬期 利尻岳南稜 その2
晴れの予報は当然の如く裏切られて、外はホワイトアウトで吹雪いている。
昨夜の暴風はおさまったが視界のない中をじわじわと進む。
稜線は次第に複雑さを増して、アップダウンを繰り返す。
見通しがきかないため進むべき方向を定めるのが難しい。
わずかな視界が開けるのを待つのも風が強く忍耐が必要だ。
全身に霧氷がまとわりついてくる。
じっとしていれば蔵王のモンスターの出来上がりだ。
幾度か懸垂下降を交える。
1300mまで稼いだ高度はいつの間にか1100m台まで下がっている。
稜線はやせ細っていて尾根上を歩くことは適わない。
幾分、傾斜のゆるいマオヤニ沢側を一歩一歩着実に蹴り込みながらトラバースしていく。
視界が開けていたらぞっとするほどの傾斜であっただろう。
ひらけた場所に飛び出すと、どちらへ行くべきか分からない。
そんな時は焦らずに先が見えるまで待ち続ける。
時には偵察に行って先を窺う。
初めてたどるルートは地形のイメージがつかみづらく行動も慎重にならざるを得ない。
「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね」
腰までのラッセルを繰り返し大槍の基部と思われるところでタイムアップ。
岩壁と吹き溜まりの隙間を利用して雪洞を掘る。
3日目の朝はまだ明けやらぬうちに雪洞を飛び出す。
急な雪壁にステップを刻みながら高度を稼ぐ。
軟雪で確保もままならないためここでは落ちない登りが求められる。
大槍の付近では進路を誤って3ピッチほどロープを出した。
稜線に抜ける所ではオーバーハングの藪雪壁となって重荷に苦しみ墜落したが、
灌木にとっていた支点で止まり事なきを得る。
一度、荷物をデポして稜線へ抜けた。
大槍の岩峰を巻いてなおも探り探り進むと仙法師稜との合流点と思しき場所に出た。
しばらく休憩して辺りを窺うと一瞬ガスが抜けてバットレスが目の前に現れた。
バットレスは圧倒的な障壁となって立ち塞がっていた。
P2へ登り、支点となる灌木を掘り起し、2ピッチ懸垂下降する。
ナイフリッジに積もった雪を落としながら馬乗りになって降りたり、
未だかつて経験したことのない動きを幾度となくさせられる。
ここは空中懸垂となる部分があって降りてロープを引き抜いたら登り返しはほぼ不可能。
バットレスを登り山頂を越える以外に下山する方法はない。
否が応にもプレッシャーがかかる。
P1を越えるべくロープを延ばすも先も見えず、時間もかかりそうだったので
ロープを固定してP2とP1の痩せたコルに幕を張った。
つづく・・・
コメント