FrontPage/2016-05-08
厳冬期剱岳北方稜線縦走 その3
うっすらと着いたトレースをたどって始まりのピークである鋲ヶ岳を目指す。
標高は861mの低山なので30分ほどで山頂へ達することができた。
しかしながらここから3000mに近い剱岳を目指すことに途方に暮れる思いがする。
単純な標高差は2000m以上であるが、その間にいったいいくつのアップダウンがあるのだろうか数える気にもならない。
しばらくは積雪も膝下程度で快調に歩を進めることができた。
何時しか雪も止み、雲の切れ間から日差しが漏れるようになった。
陽の光を浴びるだけで汗ばむほど暖かいし、心も軽くなる。
平坦な尾根道から烏帽子岳へ高度を上げ始めると積雪は増えてワカンを履いて進むことにした。
この高度までは雨であったのか、重く湿った雪に踏み出す一歩は重かった。
それでも例年の遅々として進まぬ泳ぐようなラッセルに比べれば羽の生えたような気分である。
何せ先頭が荷物を背負ったまま歩くことができるのだから。
(深いラッセルでは先頭が空身でトレースを着けた後、ザックを取りに戻らねばならない)
烏帽子山手前の1232mの広々としたピークを過ぎると尾根は次第に痩せていき
山城に空堀を巡らせているかのような幾つものギャップを越えていかなければならなかった。
烏帽子山の山頂は近いのになかなか近づかないことに苛立ちを覚えるが、ともかくも空堀を越えていく。
最後の急登をこなすと眺望のよい烏帽子山へと達した。
二日目に通過する予定の烏帽子山を早々と足下にしてゆっくりと足を休める。
眼下の雲間には広々とした富山平野と伸びやかな海岸線を境に富山湾を窺うことができた。
行く先に目を向けると僧ヶ岳の稜線がが大きく緩やかな孤を描いている。
彼の山をこの時期に制覇するだけでも一苦労の雪山登山といえるかもしれない。
東に目を転ずると北方稜線と並行しているだろう白馬三山から後立山の稜線は
回復が遅れているようでなかなか姿を現さない。
幕営予定の林道別又僧ヶ岳線を越えた広々とした尾根上にテントを張って今日の宿りとする。
朝の強い雨のあとは天気は回復へと向かい、青空の除く快適な雪山日和となった。
こんな日が続いたら今回の縦走も容易くやり遂げられるに違いないのだが…。
つづく・・・
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