FrontPage/2016-05-10
厳冬期・剱岳北方稜線縦走 その5
駒ヶ岳を後にすると天気が次第に回復していくのを感じた。
舞台の幕が開くように目の前に雄大な景観が広がっていく。
昨日までの強風が触れるだけで崩れてしまいそうな雪庇を造り上げている。
西側の樹林を縫うようにして進んでいく。
背後に駒ヶ岳が大きい。
吹き溜まりになると胸まで没するパウダースノー。
数多くのアップダウンを繰り返して進む。
荒波のような大自然の造形。
午後になると次第に風雪模様となってきた。
滝倉山の肩まで足を進めて幕を張った。
翌日は出だしから吹雪。
再び雪庇におびえながら探り探り進んでいく。
雪は深く滝倉山が遠い。
午後から回復基調の予報であったが、なかなかガスが晴れない。
わずかに目指すウドの頭を窺うことができるようになってきた。
前半戦の核心部といわれるウドの頭は絶壁と痩せ尾根に守られたピーク。
唯一の登路である稜線は切れ落ち、大木が障壁となって立ち塞がる。
大量の雪をまとった猛烈な藪が行く手を阻む。
頭を越す大きなザックは彼らの恰好の餌食である。
やむなく側壁を巻かなければならないこともしばしば。
一向にペースは上がらない。
藪の中を懸垂を交えながら進む。
コルに降り立つと冷たく厳しい風が吹き上げてきた。
ようやくウドの頭への雪壁に取り付く。
急峻な雪壁をダブルアックスで土竜のようにラッセルしていく。
頭を超す雪を何とか踏み固めながら高度を上げる。
途中で日が暮れてこの日は残業となった。
適地を見つけ烈風のなか何とか幕をはり潜り込んだ時には20時近くになっていた。
つづく・・・
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