FrontPage/2017-01-11
厳冬期 飯豊連峰敗退記 その1
山へともに行くパートナーがいないことは、その山行を止めにする理由になり得るだろうか?
自然との対話であったり、挑戦という意味においてはむしろ、
その間に差しはさむものの一切ない"単独行"という形が理想的である。
全てを自分自身の判断で行い、行動を決定する。誰に対して気兼ねすることもないし気を使う必要もない。
いつでも止めることもできるし、いつまで続けてもいい。
危険やリスクとの向き合い、受け入れるかどうかは自分次第である。
ただ一つルールや縛られるものがあるとすれば、「自分の足で山を下りて家に帰ること」かもしれない。
あるいは最大限そうしようと努力することではないだろうか。
人の通わぬ厳冬の山に入る気持ちはいつも重苦しい。
中止せざるを得ない何らかの仕方ないことが起きないか内心期待する自分がいつもいる。
独りである今回はなおさらだ。
「それでも行かずに後悔はしたくない」という思いで自分を奮い立たせる。
その二つの思考を山行が近づくと絶えず繰り返す。
そんな迷いを振り切るように新潟行きの夜行バスに飛び乗った。
新潟から羽越本線で坂町へ、そして2時間半の待ち時間を経て米坂線に乗り換え越後下関駅まで。
電車のなかから白く輝く杁差岳の姿が伺える。
今日は稜線も穏やかな様子。
こんな天気はできれば後にとっておきたいところである。
ここからタクシーに乗り換えて大石ダムへ向かう。
運転手のおじさんは夏はよく送り迎えするが、冬は初めてだと言っていた。
ダムから林道歩きが始まるかと思ったが、雪が少なくゲートのある彫刻公園まで入ってもらうことができた。
今年は麓の雪が少なく林道を延々とラッセルしなくても良いようである。
進むにつれて雪が増えていくが快調に歩くことができた。
林道終点の杁差岳登山口から山道へ入る。
膝下の雪でアイゼンのまま進むことができる。
下手をすればこの日は林道終点当たりまでと思っていたが、どんど進むことができた。
尾根に上がると朝日連峰が白く輝いていた。
遠く蔵王の山並みも見える。
初日は重荷にもなれず調子も上がらないが、コンディションのいい時になるべく歩を進めるのは冬山稜線歩きの定石。
ひとたび荒れたら何日も動けなくなることはザラである。
最終的には二日目の幕営予定地の千本峰付近まで進むことができた。
今夜から明日の朝にかけて低気圧通過で雨予報。
夜にはゴウゴウと山が鳴るような音を立てて暴風がテントを揺すった。
つづく・・・
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